なぜ“こだわり”が強くなるのかについて、アスペルガー症候群の当事者であるママの考えや、発達凸凹のある子どもへの接しかたで気をつけていること、っておはなしです。
発達凸凹は“こだわり”が強い人が多い
わたしは10代のころ、アスペルガー症候群の診断を受けています。いろいろ特徴はあるのですが、きょうは“こだわりの強さ”について、発達凸凹当事者であるママが考えていることをおはなしします。
発達凸凹には、強いこだわりを持ったひとが多い。
これは、発達凸凹について調べたことがある人には、よく知られている特徴のひとつです。どのような“こだわり”をもっているのかについて、ブログなどで体験談を書いている人も多いです。
でも、なぜ“こだわり”が強くなるのかについて、詳しく説明してある体験談は、あまり多くありません。
なぜ“こだわり”が強くなるのか
アスペルガー症候群の当事者である、はたのんママは、“こだわり”が強くなる原因のひとつを、「成功体験の再現」なのだと考えています。
標準的な発達をしている人にとって、当たり前にできることでも、発達に凸凹がある人にとっては、上手くできない動作がたくさんあります。ちょっとしたことです。でも、それが積み重なると、あれもできないぞ、これもできないぞ、と、失敗体験ばかりが増えていきます。
だから、やっと上手にできたとき、その動作を繰り返してしまうのです。いまと同じように「再現」したら、また成功できるはずだって。何度も成功するうちに、(この方法じゃないと、絶対に失敗する)って思い込みが強くなり、他の方法にチャレンジすることを怖がるようになってしまうのです。
たとえば、はたのんママの場合、顔を洗う回数とか、手を洗うときに前後に動かす回数とか、子どものころは、「いつもとおなじである」ことに、非常にこだわっていました。
(・ω・) 手先が不器用だったんだと思う。こまかい動作が苦手だったから、自分のなかでルールを作って、規則的に行動し、安心していたのかも。おまじないみたいな感じ。
出かけるときの時間にも、こだわりがありました。2週間前までに決まっていないおでかけには、とても抵抗があった。楽しくても、行きたくなかった。どこに行くのか、はっきり決まっていないおでかけも苦手。何時に昼ごはんを食べるのか、そういう細かい予定が無いと、不安だった。
どこに行くかによって、持ち物が変わる。用意をするには時間がかかる。わたしは、お姉ちゃんみたいに、パパパッと準備ができませんでした。何日も前から必要なものを揃えて、何度も確認しないと、安心しておでかけを楽しめません。楽しくないおでかけは、わたしにとって「失敗」だったのです。
新しい成功体験が増えると、こだわりは薄れる
子どものころは“こだわり”が強かったわたしですが、その特徴は、だんだんと薄くなってきました。それは「成功体験」が増えたからです。
たとえば。大人になると、友達や仕事の予定に合わせて、急に行動を変更しなければいけない場面が増えました。家族だったら「行きたくない」と主張できたけども、他の人に迷惑をかけるわけにはいかない。仕方ないので、不本意ながら、自分ルールにしたがわない行動が増えました。
でも、ここで、わたしの予想とは違う出来事が起こりました。
わたしルールに反する行動、つまり急な予定の変更によって、体験した出来事が、めちゃくちゃおもしろかった。上手くできた。そういう「成功体験」が増えたのです。
予定通りにやらなくちゃ、上手くできない。成功できない。という考えかたから、予定通りにはいかなかったけど、楽しかった。きょうは「成功」だった。と感じる日が増えました。
やがて、自分のなかにあった“こだわり”から解放されました。「成功体験の積み重ね」によって、“こだわり”は薄くなりました。
(・ω・) “こだわり”って、わがままに見えるけど、本人だって苦しいんだよ。
ちゃんと成功できるんだろうか、また失敗するんじゃないか、同じ手順でやらないと上手くできないに決まっているって悩んで、不安で苦しかった。まわりも「おかしい」「やめなさい」って言うし、わたし自身も自分の行動がおかしいことに気づいていたけども、やめることができなかった。
ほかの“こだわり”も一緒。「いつもと違う方法でやったけども、上手くできた」って成功体験が増えると、その行動が選択肢に増えます。選択肢が増えると、場合によって使い分けができるようになります。だから、この方法じゃないとダメって気持ちが薄くなります。本人にとっても、めちゃくちゃ楽ですし、まわりの負担も減ります。
やったらダメじゃなく、他の方法で成功する体験を増やしてあげよう
わたし自身の“こだわり”を振り返ってみると、それは「成功体験の少なさ」や、失敗を積み重ねてきた敗北感によって起こっていたと考えています。
家族から「やめなさい」と言われていたときには、やめることができなかったけども、「いつもと違う出来事」による成功体験の繰り返しは、低いハードルで、わたしを“こだわり”の外の世界へ連れ出してくれました。
「他の方法でも、上手くできた」っていう成功体験は、自信につながります。実際に起こった出来事以外の行動に対しても、(もしかしたら上手くできるかも)って気持ちが膨らみ、次第に挑戦できるようになりました。
発達凸凹のある息子3歳、ひとつの方法に“こだわり”を示す場面がありました。そのなかで、たまに、他の方法を受け入れる日もあります。そのときに、「いつもとちがうやりかたしたけど、上手にできたね」「こっちの道を通ると、メダカに会えたね。いつもの道にはいなかったね。ラッキーだったね」など、“いつもと違う方法も楽しかった(上手にできた)よね”って、息子3歳が成功体験を忘れないうちに、何度も繰り返して伝えるようにしました。
(・ω・) 小さい子どもって、すぐ忘れるよね。だから、復習大事。言葉で繰り返し体験する、思いだすのが大事と思う。
いつもと違う、他の方法でも「楽しかった」「上手にできた」っていう成功体験が増えるにしたがい、いつもと違う行動を拒否する回数が減りました。
以前に読んだ本にあった「自分は意外と有能なんだな」って自信いっぱいの気持ちが、強い“こだわり”を薄めてくれるのかもしれません。