【号泣する準備はできていた】熱帯夜、江國香織、読書感想文

ひとつの物語を読むごとに余韻が残り、考えているうちに眠くなる。寝る前の読書におすすめな短篇集です。

こんばんは、はたのんです。このブログは、アスペルガー症候群はたのんママが、発達凸凹のある息子(自閉症スペクトラム)といっしょに成長する記録です。

画像提供:写真AC なおみんとさん


 【号泣する準備はできていた】熱帯夜、江國香織、読書感想文 


2004年に直木賞を受賞した江國香織さんの「号泣する準備はできていた」という短篇集の3番目の作品「熱帯夜」について。

この作品は、女性同士のカップルを描いた物語です。描かれているのは、異性同士のカップルと同じく、当事者にとって特別ではない日常です。

読んだあとに余韻が残る物語。言葉ひとつひとつが辞書のなかにあるときよりも息吹いているなあ、と思うのです。

いまより20年近く前、同性カップルへの理解が進んでいなかった時代に、この関係を文章にした感性も興味深いです。多くの人に知られているわけではないけれども、確実に存在する少数の人間の心に寄り添った感性、常識が変わる日がくる未来を見通す力が秀逸な作品だと感じます。


 印象に残った言葉 


【号泣する準備はできていた】「熱帯夜」のなかで特に印象に残った言葉をふたつ紹介します。

まず、ひとつめはこちら。

三年前のあの日に、私は五歳の秋美とも、十七歳の秋美とも出会ったのだ、と、思う。
参考文献:江國香織「号泣する準備はできていた」新潮文庫

わたしが、この言葉を印象的だと感じた理由は、たったひとつの文章で圧倒的な時間の流れを表現したところが美しいと思ったからです。

この文章を読むだけで、ふたりの関係が非常に深いものであることが伝わってきます。

次に印象に残ったのはこちら。

「言ってごらんなさい。何が不満なの?」
片方の肘をカウンターにつき、その手を頭で支えている。とてもほんとうとは思えないくらい、特別できれいだ。
「何も」
私は微笑んでこたえて、
「あるいは、何もかも」
と言い換える。
参考文献:江國香織「号泣する準備はできていた」新潮文庫

わたしはこの文章のリズムが好きです。「何も」「あるいは、何もかも」を繰り返す部分のリズムが美しいと思いました。

音楽を聴くときに口にする、歌詞が好きだから、リズムが好きだから、と同じく、前者は言葉の意味が好きで、後者は言葉のリズムが好きです。


 寝る前の読書におすすめな短篇集 


江國香織さんの「号泣する準備はできていた」は、静かな物語のなかに、かすかな心の動きを表現した、いっぱいの言葉が輝く作品です。

ひとつの物語を読むごとに余韻が残り、考えているうちに眠くなる。寝る前の読書におすすめな短篇集です。

(・ω・) ひとつの話が短いから、区切りよく終われるよー。

ほな、また。よしなにー。

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