【冤罪で炎上した人が失うもの】湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」読書感想文

炎上するには十分な理由がある。ように見える話であっても、冤罪が含まれていることがある。語り手によって都合の良い言葉だけが伝わる可能性があるということに気づく物語の読書感想文です。

こんばんは、はたのんです。このブログは、アスペルガー症候群はたのんママが、発達凸凹のある息子(自閉症スペクトラム)といっしょに成長する記録です。

画像提供:写真AC まろーphoto17さん


 【冤罪で炎上した人が失うもの】湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」読書感想文 


10年ほど前に、井上真央さんが主演で映画化した作品です。

(・ω・) 図書館のオススメ棚で見つけました

映画は、なかなかおもしろい作品だった記憶があります。映画と原作で結末が違う作品もあるので、一度原作を読んでみようと思って手に取りました。

小説と映画で、あらすじは大きく変わっていないけれども、本の構成が面白く、あっという間に読み終えました。映画を見たことがある人にもオススメの1冊です。

あらすじ。

湊かなえ「白ゆき姫殺人事件」は、化粧品会社で働く白雪姫のように美人な女性が殺害されるところから、物語が始まります。

同じ化粧品会社で働く地味な女性、同期である城野美姫(井上真央さん)が犯人として疑われ、それをきっかけに同僚や友人、幼馴染、近所の人、両親から「そういえば」と嘘か真実か分からない発言が飛び交いました。

化粧品会社で働く友人をもつ週刊誌記者が、嘘か真実か分からない証言を、さらにおもしろおかしく報じたことで、ネットを中心に犯人に違いないとの意見が盛り上がり、城野美姫の情報が拡散。

ところが、犯人として逮捕された人物は城野美姫ではありませんでした。

最後に、当事者である城野美姫の視点で何が起こったかの記憶が回想されていきます。

城野美姫は犯人では無かったけれども、職場の人間関係も、友人との信頼関係も、家族への愛情も、全部、取り戻すことはできないままで、物語が終わりました。

ここからは、わたしの感想。

この物語に描かれているものは、全部が「嘘」でした。読んでいたときは、最後にある城野美姫の視点に書いてある情報が「本当」だと思いながら読んでいたのですが、もしかして、これも「嘘」なのかもしれません。

城野美姫の視点が真実であったと考えると、殺害された美人な女性が悪い人のように見えるのですけれども、そんなに悪い女性だったのかなあ、と思うような違和感のある文章もいくつかありました。

無意識の悪意? ひとつ嫌なところがあると、それ以外も悪い方向に繋げてしまうのでしょうか。

真犯人が捕まったあと、城野美姫に起こったような無意識の悪意による攻撃が、美人な女性に対しても起こっていると感じました。

文章に書いてる内容を そのまま素直に理解すると、真犯人が見つかり、城野美姫は自分の犯人説が解決したあとに、今度は美人な女性を責め立てるように炎上を始めたネットの様子を悲しんでいました。

城野美姫が何を考えていたかを、多くは語らない文章だったように思います。起こった出来事は書いてありますが、城野美姫が何を考えていたかは明確に表現されていなかったような。

10年前に見た映画も、そんな感じで、ふわっと終わった印象がありました。

まわりの人がなんだかんだと(こう思っているだろう)という発言をするのですけれども、城野美姫が言ったわけではないんです。城野美姫は曖昧な表情をして終わったと記憶しています。

映画版との違いを、あとがきで映画監督が書いていました。

映画版では、最後に週刊誌の記者が炎上をするシーンがあります。悔しがりながら歩いていると、車を運転していた城野美姫とぶつかりそうになるのですが、週刊誌の記者は城野美姫に気づきませんでした。

もうひとつ、この本の構成がおもしろいことについて。

前半に、いろいろな繋がりのある人の証言が連ねてあります。

後半には、SNS風の情報ページや、新聞記事風の情報ページがあり、前半の証言が、どのような記事になったのかを比較できる仕組みになっています。

城野美姫は、自分が目にした情報、SNSや新聞記事、テレビの情報によって、自分のまわりにいた人が自分の味方ではなかったとショックを受けるのですけれども、前半の証言の段階では城野美姫の味方をする人もいました。

そのなかから週刊誌の記者にとって都合が良い言葉だけをあつめて、ときには言ってない言葉まで追加して、城野美姫がどんなに悪い人間かを表現しています。

犯人ではないことが分かったあとでも、城野美姫は、まわりの人間と以前のように接することが難しい状態になりました。

映画化から10年以上経ったいま、ネットで炎上する場面がたくさんあります。

炎上するには十分な理由がある。ように見える話であっても、冤罪が含まれていることもあるのかもしれません。

冤罪であることが分かって良かった。はい、終わり。元通り! ではないんだ、というのがよく伝わる物語でした。

最近、炎上にまつわるニュースを目にする機会が多かったので、こういうことが起こる可能性があるんだなぁと、炎上問題への認識が深まりました。

湊かなえさんの作品は人気があるのは知っていたのですが、ほとんど読んだことがありません。他の小説も読んでみたいと思いました。

ほな、また(・ω・) よしなにー。

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