【こどもの目をおとなの目に重ねて】中村桂子、読書感想文

今日できないことが明日にはできるかもしれない。日々変わっていく生きものとしての人間。学びの原点は自分の手で触って経験すること、こどもの目におとなの目を重ねて世界を見つめる生命科学のエッセイ本についての読書感想文です。

こんばんは、はたのんです。このブログは、アスペルガー症候群はたのんママが、発達凸凹のある息子(自閉症スペクトラム)といっしょに成長する記録です。

画像提供:写真AC EMSjpさん


 【こどもの目をおとなの目に重ねて】中村桂子、読書感想文 


図書館でタイトルにひかれて借りてきました。

JT生命誌研究館名誉館長である女性が書いたエッセイの本です。

障害そのものについて書いているわけではないのですが、障害のある人からつながる生命科学の話もあり、興味深く読みました。

特に「ここにある学びの原点」という物語に、わたしは心が惹かれました。

目の見えない人が通う支援学校では生物について教えることが難しいそうです。動物の頭蓋骨を何日にも渡って触って確かめながら、違いを見つけて、何のために違うのかを考える授業をしている様子が書いてありました。

たとえば、歯の形。歯があるかどうかに始まり、歯の形を調べる。どうして違うかと考えていくと、その生きものが肉食か草食かが分かるという風に、頭蓋骨の違いをひとつひとつ体験して学ぶそうです。

目が見えないからこそ、目が見える自分たちには与えられていないもの、手の動かし方や物の感じ取り方、情報の繋げ方など、学びへの気づきがどうやって始まるのかを感じることができたのだと書いてありました。

『自分のうれしい気持ちを伝えるために自分の頭で考えた言葉が生まれてくる。発する言葉はすべて、自分の手で触った体験に基づいている。』このような体験を今どれだけの子どもたちがしているだろうか。学びの原点がここにある。
引用:「こどもの目をおとなの目に重ねて」 著 中村桂子(青土社)

体験しないと分からないことがたくさんあるのだと。

もうひとつ、作者の人格が伝わる文章の書き方にも心が惹かれました。たとえば、こんな感じ。

ヒトクローンに話が及んだ時です。私が『生きものはできるだけ多様にしようと進化してきたので、まったく同じ個体を生み出す意味はないし、同じゲノムを持っていても環境で人間としては別の人になるし……』と懸命に話したのに対し、『ぼくもそれはよく分かるんですけど、科学ってとにかくできることはやってみようじゃないか、という面がある。無理することが』とズバリと言われてしまいました。シドロモドロでモソモソ言うしかない。おっしゃる通りですから。教えられることが次々と出てきた体験でした。
引用:「こどもの目をおとなの目に重ねて」 著 中村桂子(青土社)

自分の考え方と違う考え方をシドロモドロになりながら受け入れる姿が目に浮かびます。

私は息子にとって教える側の人間です。ですが、この頃は教えられる側になる場面も増えたように感じています。

「こどもの目をおとなの目に重ねて」は、生命科学の本ではありますが、子育てにも活かせる考え方に気づく興味深い本でした。

今日できないことが明日にはできるかもしれない。日々変わっていく生きものとしての人間。学びの原点は自分の手で触って経験すること、こどもの目におとなの目を重ねて世界を見つめる生命科学のエッセイ本についての読書感想文でした。

ほな、また(・ω・) よしなにー。

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