アンソロジー本「ひんやりと、甘味」は、おいしそうな甘味の物語にくわえて、地元を離れて暮らす人に響く言葉が詰まった本です。
こんばんは、はたのんです。このブログは、アスペルガー症候群はたのんママが、発達凸凹のある息子(自閉症スペクトラム)といっしょに成長する記録です。
画像提供:写真AC くまななさん
【地元を離れて暮らす人に響く本】読書感想文「ひんやりと、甘味」
先日 紹介したアンソロジー本「こんがり、パン」と同じシリーズ、「ひんやりと、甘味」についての読書感想文です。
やっぱり このシリーズはおもしろいです。同じテーマでたくさんの作家さんが書いた文章をまとめてあり、自分が好きな作家を見つけるきっかけになる本として、非常におすすめのシリーズです。
食べ物にまつわる話という、人類誰もが興味をもつテーマを扱っているので、本当に読みやすいです。
今回の「ひんやりと、甘味」は文字通り、甘味についての短い話をまとめています。
そのなかで特に印象に残った物語はふたつありました。ひとつに決めたかったのですけれども、これはどちらもわたしの感性を強く揺さぶって気持ちの旬を作り出した素晴らしい物語だったので、今日はふたつ紹介します。
ひとつめ。増田れい子さんの「アイスクリーム」という物語。
子どもの目線から見た戦争のこと、現在とは違い移動手段が少ないなかで一生に一度実家に帰省できるかどうかの距離へ嫁いだ女性(母親)の姿、まわりの大人がさまざまな気持ちを抱えていたけれども、自分の頭はアイスクリームを食べた幸せな気持ちでいっぱいだったという想いが綴られたものでした。
そして私は若かった。
引用「ひんやりと、甘味(おいしい文藝)」河出書房新社
最後の一文の余韻が素晴らしいと思いました。
ふたつめ。川上弘美さんの「八月某日 晴」
自分の地元で開いた飲み会の帰り道、”おいしいガリガリ君が売っている店”として地元の店を紹介するんです。いわずとしれたガリガリ君、地元と都会で味が違うはずないのに、いつもと味が違うというまわりの言葉を誇らしく思う、って物語です。
このへんのガリガリ君て、僕の方のガリガリ君と違う味がするなあ。一人が言うと、みんな口々に「違うね」「ほんとにちがうよ」と賛成する。
引用「ひんやりと、甘味(おいしい文藝)」河出書房新社
この物語は、読んでいる最中から、身体の奥がワッとして体温が上昇するような熱を感じました。
地元と都会で同じものを食べていても、なにか違うものを食べている感覚、地元から遠く離れた場所で暮らしていると経験すると思うんですよ。
その感覚をこういう文章で表現するのが素晴らしいと思いました。
アンソロジー本「ひんやりと、甘味」は、おいしそうな甘味の物語にくわえて、地元を離れて暮らす人に響く言葉が詰まった本です。
他の物語も吸い込まれるようなものが多いので、ぜひ読んでみてほしいです。
ほな、また(・ω・) よしなにー。
↓ スポンサーリンク